
銀の兜の夜〈二〉
本書は、1996年に書かれた『争いの樹の下で』の続編に当たるような作品である。換言すれば、自由とは何か、を求めて苦悩する若者の物語で、氏の膨大な作品群の中核に位置するものであることは論を待たない。 海辺の小屋で暮らす親子四人。主人公の私は末っ子で、兄は小説家志望だが、やがて政治の世界に興味を持ち、権力の手先となる。 ある日、父親が漁網にかかった銀の兜を持ち帰る。それが壮大なドラマの幕開けだ。私のクラスメートで、近くの米軍演習場に出入りする米兵たちになぶり殺しにされたオカマの鉄夫。銀の兜で一儲けを企む骨董商。花見沼に棲む河童。わけのわからぬ僧侶たち。 銀の兜を被ったとたんに、人格が豹変し、米軍基地に闇雲に突っ込んで、四人の米兵を殺害したりする。自由のためには人殺しも良しとする兜。つまり兜は“一殺多生”を説くのだ。しかしそれは、逆に自由を束縛するものだということに、私はしだいに気づいていゆく。そしてついに、個人としての本物の自由が待つ、いつも太陽が昇ってくるときめきの方角へ向かって船の舵を切るのだった。 銀の兜とは所詮、人間の自由を言挙げしながら、それを結局は奪うことになる、国家であり、宗教であり、人間の業であり、根深い因習でしかなかったのだ。現実と幻想が交錯し、それでいて非現実に陥らない、丸山文学の真骨頂が発揮された作品といっていいだろう。
- 出版社
- 柏艪舎
- 発売日
- 2018-12-15
- ページ数
- 639ページ
- ISBN
- 9784434247279
