
カント理性法構想の可能性
カントの『人倫の形而上学』「法論の形而上学的定礎」を主要テクストとして、カントが提示する法構想を「理性法」という観点から再構成し、その可能性を示す。 『人倫の形而上学』は出版以来、長い間軽視されてきた。しかし1980年代のヴォルフガング・ケアスティングやラインハルト・ブラントにより、カントの法哲学の研究は、質・量ともに飛躍的に発展してきた。本書は「法論の形而上学的定礎」を首尾一貫した「理性法」的プロジェクトと見なすケアスティングの解釈に依拠してカントの法構想を検討し、さらに、そうした法理解の現代的意義について考察する。 さらにこの構想のもつ可能性を現代社会の諸問題にも適用して探求することで、哲学研究、法学研究の分野だけでなく、倫理学や社会学、政治学といった様々な学問領域の問題意識に適用しうる視座を提供する。 序論 第1部 「理性法」における法と道徳の関係 序 第1章 法の道徳への〈依存〉 第1節 法の法則の拘束性 第2節 「実践的法則」の定言的拘束力 第3節 法の客観的妥当性と法の道徳への〈依存〉 小括 第2章 〈独立〉と〈依存〉の首尾一貫性 第1節 判定原理と遂行原理の一致 第2節 法構想の首尾一貫性ー強制の道徳的根拠づけ 第3節 法的主体の首尾一貫性ー「統合された意志」による義務づけ 小括 第3章 法論の基盤としての道徳哲学という文献学的可能性ー定言命法の適用例における二つの基準の考察を通じて 第1節 問題の所在ー二つの基準と定言命法の関係 第2節 目的論的前提の密輸入 第3節 定言命法の適用可能性 小括 第2部 理性に基づいた/理性のための法構想 序 第4章 カント法哲学における「道徳性」の意義 第1節 法の妥当性の根拠 第2節 「道徳性」に基づいた規範の基礎づけの近代的意義 第3節 ケアスティングの法論理解における「道徳性」の意義 小括 第5章 「道徳性」に基づいた法構想 -「内的法義務」および「生得的権利」を手がかりに 第1節 モーアにおける道徳目的論的な法の基礎づけ 第2節 ケアスティングにおける法と道徳の分離 小括 第3部 理性法構想における「私法」と「公法」 序 第6章 「理性法」の必然的帰結としての私法の基礎づけ 第1節 「実践理性の法的要請」 第2節 「法的要請」の位置づけと総合的原理の必然性 第3節 法的な占有概念の経験的対象への適用可能性 第4節 適用理論としての取得理論 第5節 私法の基礎づけから帰結する自由の制限 小括 第7章 公法の必然性の二つの正当化ー私法から公法へ/法の法則から公法へ 第1節 普遍的な「自由」の秩序としての「法」-法の法則と人間性の権利 第2節 法的所有の必然性から公法の必然性へ 第3節 法の法則から公法の必然性へ 小括 第8章 カントの自立命題における誤謬とその帰結について 第1節 市民の条件としての「自立」? 第2節 体系上の論理的誤謬:「sui iuris」の二つの解釈の逆転 第3節 排除の構造という帰結 小括 結論
- 出版社
- 大阪大学出版会
- 発売日
- 2026-01-09
- ページ数
- 246ページ
- ISBN
- 9784872598476
