
幸田文 「台所育ち」 というアイデンティティー
父の死が国葬になってしまう……そんな特殊な立ち位置から「露伴の想ひ出屋」として作家生活をスタートした幸田文が、露伴の傘の下を脱し、真にオリジナルな自らの文学を確立していく過程を、各作品を丹念に読み込むことで、本書はつぶさに論じています。 「父から授かった厳しい躾が作家・幸田文を生んだ」という凡百の作家論を超えて、「台所育ち」という特異なキーワードを用い、幸田文が露伴の影響と闘いながらいかにして自らのオリジナルな〈セルフイメージ〉を摑んでいったのか、を明らかにします。 「台所育ち」の原像をつくった『あとみよそわか』。作家・幸田文を生き直す契機となった『終焉』から、『流れる』、『おとうと』へと続く作品群。そしてポスト結核小説の傑作『闘』から、「台所育ち」の豊かな感性が自然に触れる地点から生まれた『木』や『崩れる』などの名作を、あくまでもテクストに当たることで論じ尽くした本書は、初めての本格的な評論でもあり、これから幸田文を読もうとする読者にとっては、格好の「幸田文入門」でもあります。
- 出版社
- 田畑書店
- 発売日
- 2017-09-01
- ページ数
- 512ページ
- ISBN
- 9784803803457
