
唇に磁石
渡辺八畳詩集 渡辺は「そのものへと、成って」いくことを、 言葉で彫刻するかのように、 独特の大胆さと繊細さで、 彫刻の刀ならぬ筆を鋭く振るっている。 ―― 和合亮一 【作品紹介】 皿が溶ける日 頭上にある点滅灯が さして主張せずに独立を果たすから 今日はその下を無毒の鉛が流れていく 正午前の日差しはいい感じに焼いてきて 一歩 二歩 夜には雨が降ることをまだ知らない 少し前まで全世界は静止していたのに それを全く感じさせない正常な日だ 見ない見なーい 見ない 腹を擦って道を作る 陶器が土に戻らぬまま溶けて 上へ上へと垂れ流れて 絶妙な硬さを視覚から感じさせて 最後のひと液は 量が足りなくてかすれ残った 途端全てが緋色に変わり重力が増す
- 出版社
- 七月堂
- 発売日
- 2025-10-03
- ページ数
- 120ページ
- ISBN
- 9784879446169
