
温泉の平和と戦争 東西温泉文化の深層
湯浴みは心身の疲れを癒す! 温泉は「アジール」だ。 すなわち「避難所、憩いの場、聖域」なのだ。 古代ギリシアでは、各ポリスの神殿が典型的アジールと認められていた ことから、その言葉の持つ意味が想像できる。アジールという概念は 「平和の場」とされた浴場、湯屋、さらには温泉と深くかかわっている。 古代ローマ共和政時代から帝国時代にかけて 公共の浴場が市民の娯楽・保養の場として生活に欠かせなくなっていた。 遠征先で温泉を見つければ、先住民がすでに利用していた温泉地を 征服した後、駐屯兵らの慰安と健康のために立派な浴場を設けた。 ローマの入浴慣習はイスラム社会に引き継がれ、 今も日常生活に定着している浴場文化の基である。 キリスト教徒も十字軍遠征を通じ、浴場の価値を再認識し、 ヨーロッパ社会に環流させた。 共同浴場には、民間浴場主が経営していた街の風呂屋のほかに、 農民・村人が共同で費用と労力をかけてこしらえた浴場があった。 風呂の用意が整うと呼び声が周囲に響き渡った。 体をきれいにするだけでなく、魂を清める働きを持つと考えられたのだった。
- 出版社
- 彩流社
- 発売日
- 2015-11-02
- ページ数
- 238ページ
- ISBN
- 9784779121791
