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政権変革期の独禁法政策

政権変革期の独禁法政策

吉田茂

書 評  私たちの職場である衆議院事務局は、勉強好きの人には格好の職場であり、学界にいるだけではわからない現実の統治の仕組みやその動きを実際に見聞することができる。吉田氏は、大学で理論的なものを学ぶかたわら、この職場で実務に携わる中で、そうした仕組みや動きを目の当たりにされ、実務と理論とを融合させようとされたのであろう。その努力が結実したのが本書である。本書は、国の仕組みの中でもっとも重要な法案の制定過程に関して、省庁における粗々の案の作成から省庁間の合議や法制局審査、与党審査といった内閣提出法案の行政府内の作成過程のみならず、ご本人の得意とする国会審議までも網羅しており、これほど詳細な研究は他にないのではないだろうか。 なお、読者の中には、与党内での法案審査手続きについて、民主党政権における手続きの記述が少ないことに若干の不満を持たれるかもしれない。しかし、民主党政権自体がその党内手続きを何度も変更しており、これが一定の形に落ち着くまでは研究として発表することが難しいことは読者にもご理解いただく必要があろう。吉田氏もおそらく同じ認識であり、いずれ氏の他に追随を許さない労作が出ることはまちがいないだろう。 後半部は、そうした法案の制定過程を具体的な法案に落として説明するものである。 吉田氏は、衆議院のシンクタンクともいうべき調査室に、長く在籍し、その多くを物価問題の調査に費やされたが、そうしたこともあってだろう、独占禁止法に深い関心を寄せられていたようである。 本書では、最初に、独占禁止法の誕生からその成長までを述べ、続いて平成一七年の大改正に焦点を当てて詳細に言及している。この一七年改正は、規制緩和の流れの中で、自由で公平・公正な競争を守るために公正取引委員会がなさねばならないことは何かという問題意識の下で、リーニエンシーを導入したり、課徴金を拡大かつ引き上げようとするもので、ポリシーの転換とも言えるほど大きなものであった。それだけに、本来なら公正取引委員会という比較的弱い官庁だけではできなかったことを、官邸が主導し、あるいは当時の委員長の卓越した能力でもってこれを現実化していったわけだが、普通ならわからないこうした裏の事情を、氏は丹念な調査でもって明らかにしている。今年の必読書として薦めたい一冊である。 衆議院事務次長  向大野新治

出版社
三重大学出版会
発売日
2012-12-14
ページ数
340ページ
ISBN
9784903866116

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