てんかんの人間学的探求
激しい発作や痙攣をともなう病理「てんかん」。太古から存在するこの病は、あるときは「神聖病」や「狐つき」などの超自然的な現象として崇拝され、あるときはその視覚的な恐ろしさから蔑視・差別されてもきた。古代には呪術や憑依として、初期・中期の医学の観点からは女性特有のヒステリーとして、そして近代医学では脳の電気的異常としてーーてんかんに対する認識は歴史上さまざまな形態をとってきた。 本書では、こうしたてんかんの診断史を丁寧に整理することから出発し、臨床的な知見もふまえながらより「人間学的」な検証をおこなっていく。そのときに着目するのが、上田秋成、南方熊楠、黒澤明、フローベール、ゴッホ、ドストエフスキーという、てんかんを患っていたとされる文学者・芸術家の伝記的事実の数々だ。 目に見える発作や痙攣として表出する医学的・生物学的な現象としてだけでは捉えきれない、より精神的・内面的なレベルでの「人間にとってのてんかん」という側面を、豊富な実例をもとに浮き彫りにする。てんかんを人類の文明史に位置づけなおし、その根源を人間学的に探求する稀有な試み。 【目次】 まえがきーー「てんかんの人間学的探求」について 富田三樹生 第1章 てんかんの人間学的探求 1 その歴史の素描 2 現代とてんかんーーてんかんとは何か 第2章 てんかん発作と自己組織性 1 てんかん発作の構造的展開 2 「情動てんかん」について 3 反射てんかん 4 「興奮がより強い興奮を呼ぶ」--情動における正のフィードバック作用 5 「自己組織性」とその精神疾患の病因論的意味 第3章 てんかんと解離の内的連関について 1 ヒステロエピレプシーから「偽発作」へ 2 ヒステリー(解離)とてんかんの症状の類同性についてーー両者の外的連関から 第4章 てんかんの病碩学(1)--上田秋成・南方熊楠・黒澤明のてんかんと創造性 1 上田秋成 2 南方熊楠 3 黒澤明 第5章 てんかんの病碩学(2)--フローベール・ゴッホ・ドストエフスキーのてんかんと創造性 1 ギュスターヴ・フローベール 2 フィンセント・ファン・ゴッホ 3 フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー 第6章 てんかん・解離結合群について 1 てんかんの具体像 2 解離について 3 解離の始原を追ってーーイム・「憑依わずらい」・ヒステリー 4 解離とてんかんの本質的同一性 5 三大精神病論の要点 …
- 出版社
- 青弓社
- 発売日
- 2026-09-10
- ページ数
- 240ページ
- ISBN
- 9784787235794
