
トマス・ヴェンツロヴァ自選詩集
激動の生涯をつらぬく代表作73篇、リトアニア語原典から初邦訳 廊下の鍵をかけるとき、心臓の 鼓動が乱れ、胸が重くなった。 確かに、その国において死は 偶然ですらあり得たのだ。 ――「われらが人生の旅の半ばに」より ソ連体制による精神の支配に対峙したヴェンツロヴァは、 一九七七年、この詩の直後、祖国リトアニアを離れ、亡命する。 反体制活動、亡命、祖国独立、そして帰還―― 詩人の自選による73篇を、リトアニア語原典から初邦訳 ヴェンツロヴァは自ら認めるとおり、「ポスト・カタストロフィスト(大破局後の詩人)」である。ゆえに、戦争や全体主義による文明の崩壊を経験したのちに、その絶望を前提としながらも、なお言葉を紡ごうとする姿勢を貫いている。彼の詩には、宿命としての亡命や、「空虚ではあるが絶望的ではない世界」というテーマが顕著に現れる。壊れてしまった世界を嘆くだけでなく、その廃墟の中から新たな意味を見出そうとする――〔本書「訳者解説」(櫻井映子)より〕 境界線が分断の色合いを強め、重なり合う音律が途切れそうになる今の時代に、ヴェンツロヴァの詩はさらにその存在意義を増しているといえよう。亡命前にソ連で過ごした日々を振り返って、彼は次のように述べている――「詩の一行がどれほど輝くかを知った/それが真夜中の木々や雪をあかるく照らすことを」(「シェレメーチエヴォ空港、一九七七」)。 まさにそれと同じことを、私たちは彼自身の作品を通じて知るのである。〔本書序文「越境の詩学」(前田和泉)より〕
- 出版社
- 東京外国語大学出版会
- 発売日
- 2026-07-31
- ページ数
- 328ページ
- ISBN
- 9784910635231
