
遠い嶺
◆第一句集 遠き山は心のかたちそぞろ寒 木津さんは、脇道に逸れ、遠回りを厭わず、存外に寄道を楽しんでしまうのではなかろうか。風が吹くまま、雲が浮くまま、時の流れに身を任せて寄道をつづけていらっしゃる、そんな印象を与えるお方なのだ。 (栞より・新井大介) ◆自選十五句 雪崩から立ち匂ひたる大昔 尾のやうに水菜をつかみ夕暮るる 百枚の名刺が揃ふ穀雨かな 海の底みえて仔馬の顎うごく 桑の実や両肩がまだ日の中に 夕凪や遺言もまた歌のやう 能面に遅れて顔が夏野へと 虫すだく世のかたすみに薬箱 水の膜やぶれて秋の滝となる 虫売のその後は夢の虫籠へ かなかなや積木を箱にしまふ時 うつくしい火の山へ行く雪の道 源流に嬉しさはあり鷹一羽 室の花買はるるまでは日に震へ 本棚の向ふは枯野眠りたし
- 出版社
- ふらんす堂
- 発売日
- 2025-09-12
- ページ数
- 170ページ
- ISBN
- 9784781417646
