
夢に追われて
レーモン・クノー『文体練習』を手がけた名翻訳者/フランス文学者による、奇想の小説集。 パンデミック後の世界を描く傑作短篇から近未来ディストピア・フィクションまで、驚異とユーモアに満ち満ちた全16篇。 診察から帰ってきた鈴麗の声は弾んでいた。 「ミミタケなんだって。すごく珍しい、って感心してた」 「何、それ?」 「あのね、耳がキノコになるらしいよ。最初のあれ、真菌性のハナタケだったんだって。気がつかなくて申し訳なかったって頭を搔いてたけど、それが耳に来てしまったんだって。それでね、ハナタケがミミタケになったら、もう間に合わないんだって」 「何が?」 「だからさあ、ミミタケになったときは、もう脳の中に菌糸が入り込んでるの。だから治らないんだよ」(「KINOCCO-19」より)
- 出版社
- 作品社
- 発売日
- 2023-09-27
- ページ数
- 272ページ
- ISBN
- 9784861829956
