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トカゲの人

田島安江

トカゲの人 何もかも知っているふりをして トカゲの姿をしたあの人が 庭をよぎる ちらりとこちらを見て だからもう夢はどこにも行かない 若いときよりもずっと過激に 人を愛することだってあることを きっと誰も知らない かなしみは年をとるほど深いから 愛だって深くなるから 心だけを さみしい粉砂糖のように甘くできれば 不眠の夜が歩道に寝そべって わたしの方をじっと見ている 鳥が鳴かないのは 鳥がいなくなったわけではない 鳥は眠っているだけ おいで ここにはないものがない 人にはなくても鳥にはあるから 鳥は歩く 鳥は飛ばない 鳥は歩かない 鳥は飛ぶ 鳥はわたしを見捨てない ずっとむかしに 本を読んで過ごした 星の零れ落ちる小さな公園 いまは夜の片隅にうずくまったまま マンションに囲まれて ひっそりと虚無を抱え込む どこからか小さな悲鳴が聞こえる ――いま、何をしているのか と

出版社
書肆侃侃房
発売日
2006-11-28
ページ数
112ページ
ISBN
9784902108392

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