
美知比幾
念力の通過手間取る網戸かな 作者は呼吸器内科という、今まさにコロナ禍という一瞬たりとも気の抜けない、緊迫の最前線に身を置く。そんな状況下にありながら、僅か二年で第二句集という超人的な作家活動も塾す。俳句を忙殺される本業のシェルターなど甘くは考えてはいない。 むしろ仕事と創作という両輪の均衡が、既に抜き差しならぬトポフィリアTopophillia「場所への愛」を作り上げてしまったようだ。 しかし、これからの道程、そこを安住の地にしてはならぬのかも知れぬ。 帯より:中原道夫 ◆「美知比幾」十二句選 春泥をただ駆け回る祭とや 藤揺るる空とはいへぬ高さにて 袋角いかにも喧嘩弱さうな 短夜のほぼ雑音の子守歌 放埒や縦に寝そべる雲の峰 達人は動かぬやうに綿花摘む 大文字書き順守る気はさらさら 当番の世事に疎きが秋刀魚焼く 鶏頭の十六本目隠れけり 白菜の大きな面をしてやがる 冬立つや雲に差したる雲の影 雪吊のあそこらへんが幾何究理
- 出版社
- ふらんす堂
- 発売日
- 2021-10-08
- ISBN
- 9784781413792
